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道場、あえなく破れたり!

謹啓 深緑の一段と美しい季節、みなさまご清栄のことと存じます。さて私こと、本年3月末日をもって関西学院大学総合政策学部を定年退職いたしました。学部創設2年目の1996年4月より10年の間、皆様の暖かいご支援とご指導を賜り、まことに有り難うございました。さいわい身体の方は、早期発見で前立腺摘出手術を受け、現在のところ至って元気であります。
退職後は、さきに設立宣言した「ほんまちラボまちづくり道場」と「花鳥風月のまちづくり研究所」を舞台に、うま酒三昧の人生を夢見ておりましたが、縁あって大阪人間科学大学人間科学部人間環境学科(学校法人薫英学園、大阪府摂津市)に特任教授として就任しました。卒業後実務2年で1級建築士受験資格がとれるコースもある、小規模ながらキラリと光るユニークな大学です。またまた、元気な若ものたちと出会える有難い機会をいただきましたので、迷惑なジジイと嫌われないように、もうひと頑張りする所存です。なお三田市内の「ほんまちラボ」は、総合政策学部の長谷川計二先生(社会学)が全く新しい方向で運営継続されることとなりましたので、小生の方は『道場』をバーチャルで全国展開することに致しました。http://honmachi-lab.town-web.net/ 
http://honmachila.exblog.jp/
また、退職を機に『まちづくり道場へようこそ』(学芸出版社)、『ヴォーリズの建築を訪ねてスケッチの旅』(自費出版)を上梓しました。よろしければお贈りしますので、ご一報下さいませ。
皆様の一層のご健勝をお祈りするとともに、今後ともよろしくご指導くださいますようお願い申しあげます。
    2006年5月20日           敬白

                                                    片寄俊秀

by honmachilabo | 2006-05-20 23:43 | 最新情報  

公園緑地のマネジメント

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まちづくり道場の師範代である中橋文夫さんが、すごい本を出版されました。公園緑地の積極的、創造的なマネジメントのありかたについて具体的に提起した、まさに画期的な本です。実務家はもちろん、一般の公園緑地ファンにもお勧めの一冊です。公園緑地は地域やまちのなかでもっとも大切な空間だと思うのですが、最近では「危険な場所」「必要なのか」といった批判ばかりが聞こえてきて、これはいかんとかねて気になっており、積極的かつ創造的な運営管理こそはこれからの大テーマだとかねて思っていました。で、その研究をやってみてはと同氏にすすめたのは、他ならぬ小生でありますが、著者は小生の期待を遙かに超える大研究を展開され、こうして見事な本にまとめてくださいました。日本の造園は世界から注目されているので、この本を英訳して、わが国の新しい造園動向を海外に紹介出来ればなと思います。 Creative Management of Japanese Parks and Green Space という仮のタイトルを考えてみましたが、どなたか名乗りを上げてくれませんか。ついでに、小生の『まちづくり道場へようこそ』の英訳本もつくりたいのですが・・・・

by honmachilabo | 2006-05-12 09:33  

祝!『まちづくり道場へようこそ』増刷決定!

学芸出版社ので本書の編集を担当してくださった知念靖弘さんから、増刷になります、との嬉しいご連絡をいただきました。といっても初版が2500部そして1000部の増刷、ということですから、いわゆるベストセラーものとはまるでケタが違いますが。しかし、こういうまじめ本では、快挙といって良いそうで、ありがたいことです。正直に言いますと、もちろん文章は小生が書いたのですが、本の全体構成やアイディアについては、知念さんに全面的にご指導していただきました。ここのところずっと自費出版に近いかたちでやってきて、自分で自分の文章がハナについていたということもあり、古くさい人間であることを自覚して、変身をはかってみようと試みて成功したのだと感謝いたしております。
また、明治学院大学の服部先生が書評を書いてくださいました。学芸出版社のホームページから勝手に転記させていただきます。

読者レビュー

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まちづくり、という内容は分かりやすいようでいて分かりにくい。それは、ある人にとっては道路をつくり、川を真っ直ぐにすること、臭いものに蓋をするかの如く小川を暗渠化することを指す。はたまた、自動車も通れないような小路に人々が溢れかえっている駅前商店街を、自動車が通れるように道路を押し広げ、高層マンションが建てられるように区画を長方形に整理する事業をまちづくりという人もいる。
  然らば、まちづくり道場の主である片寄先生にとってのまちづくりとは、人づくりである。まちとは人によってつくられ、人によって営まれるものである。まちをつくるには、まず、そこで生活、活動する人をつくることなのだ、と片寄先生は言う。そう言われるとそうか、と思うのだが、人を押しのけ、人が憩っていた空間を壊して、自動車のための道路をつくることをまちづくりだと考えていた人々にとっては、これはちょっとした驚きであろう。
  本書は、片寄先生のまちづくり術を理解できるように編集された指南書である。そこには、まちづくりを成功させるための鍵になる戦術が満載されている。まちは人に愛されなくてはならない。人が関与しないまちが愛されるはずがない。それには人づくりである。そして、人との関係性、ネットワークをつくりあげていき、その先に愛されるまちが見えてくる。まちが道路や小洒落たファサードによってつくられるのではなく、人と人とが共生して生活するという関係性によってつくられていることを理解している片寄先生だからこその、温もりあるまちづくりエッセンスにこの本は溢れている。そして、それは商店街が衰退し、地域風土が喪失し、地域コミュニティが弱体化し、開発至上主義が迷走している現在の日本にとって、まさに必要とされる知恵である。経済効率、経営効率といった指標に振り回され、真の豊かさとは何かを見失ってしまっている今だからこそ、人を常に中心においた片寄先生のまちづくりの理念を我々は真摯に傾聴すべきである。ようこそ、片寄まちづくり道場へ。

(明治学院大学経済学部助教授/服部圭郎)



担当編集者より

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「パッとしないまちこそおもしろい」と著者は言います。そこに、何もないことを「発見」したうえで、逆に、このまちをどうすれば魅力的にできるだろうかと考えながら角度を変えて眺めていくと、急にまちが輝き始めるというのです。
  ものごとを柔軟に捉えながら、発想の転換を常に意識し、そしてポジティヴな姿勢で取り組んでいく。そのような態度で突き進んでいく本書は、とってもカッコいいものに仕上がっています。

(C)
 

by honmachilabo | 2006-05-12 06:29  

「日本文化の空間学・随所楽座」の興行に参加して、有明海のシンポジウムに行ってきました。2006.4.28

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観光九州の再生と浮上にむけて――諫早湾・有明海を中心とする九州エキスポの提唱
片寄俊秀(かたよせ としひで)
エコツーリズム(環境学習型観光)の時代
 道州制をにらむ動きであろうか、「九州は一つ」というキャンペーンが盛んに行われている。だが、1982年の長崎水害、1991年の雲仙普賢岳噴火による火砕流の大被害で観光長崎が大打撃を受けたときに、九州全体への入り込み客が激減したように、観光の世界ではもともと「九州は一つ」であった。九州の各地には、それぞれ個性ある人文的蓄積と豊かな自然と、うまいものと温泉があり、それらを経巡る「回遊型」こそが、九州観光のもともとの伝統であり醍醐味なのだ。だが、いま九州で人気のスポットは由布院、黒川温泉、屋久島ぐらいで、あとは今ひとつぱっとしない。テーマパークが軒並み転けたことも原因の一つだが、そこに大きく暗い影を投げかけて「回遊型観光」を阻害しているのが、九州のど真ん中に位置する諫早湾を潰した干拓事業による巨大な「どぶ池」の誕生であり、その悪影響で有明海の全体が死に瀕していることである。ここに、九州経済の長年の沈下と先行きが暗い原因があると見ている。
これは、逆に考えてみるとよくわかる。わたしは以前から、諫早湾と有明海こそはいま人気の「エコツーリズム」の最高のスポットであると主張してきた。締め切り前の諫早干潟には一夜に5万羽をこえる野鳥が羽を休めていたが、これに隣接する雲仙普賢岳から有明海の全体、さらに筑後川から阿蘇まで含めば、これは間違いなく世界遺産クラスの大自然・大人文環境であり、これが九州のど真ん中で輝き始めると、全体に明るい展望が開けると思っていた。では、もう遅きに失したかというと、じつはエコツーリズムというのは面白いもので、今からでも決して遅くはないのだ。まずは諫早湾の「どぶ池」の現状をしっかりと見つめるところからスタートする。淡水化したことで干潟の生き物は死滅し、生活雑排水が沈殿して潟土はヘドロ化しているが、阿蘇の火山灰が主成分である粒子の細かい諫早湾の潟土は、とりあえず現在の水門を開けて潮を入れるだけでも、かなり急速に蘇る可能性が高い。最初は浮遊するプランクトンが棲みつき、塩分濃度が増すに従って「遷移」が進み、藻類やゴカイが棲みつくと、それらを餌にする魚類や鳥たちが戻ってくる。じつは、「その変化の過程」こそが、エコツーリズムの格好の対象になる。同様の経過は大火災を蒙ったアメリカ・イエローストーン国立公園で実証済みである。
まずは絶望的な現状。そこからスタートして、やがて魚類が戻ってくるまでのわくわくするようなドラマティックな変化。眼前で展開される「海」と干潟のもつ偉大な復元力とそのプロセスを、人々は繰り返し見に来るに違いない。諫早湾にムツゴロウが戻るのがいつになるか。「○年○月○日」の「ムツゴロウ復活元年」の予想日を全国に募集するのもいい。そこまでやるには、高潮対策機能を残しつつ、堤防を一部開削して連続防潮ゲートに変える必要があろうが、決して難しいことではない。
人々が待ちに待ったその日から、やがて増えたムツゴロウの愛のジャンプやツクシガモやハマシギの群舞を見るために、そして有明海の海の幸を味わい、沿岸から筑後川流域全体に蓄積されている豊かな自然と人文資源を訪ねるために、多くの観光客がこの九州のど真ん中にやってくると、そこを拠点として九州全体に広がる新たな「回遊」の流れが生まれ、九州の全体に明るさと活気が蘇ってくる。
エコツーリズムは客層が良く、経済効果も高いのが特徴である。一過性の物見遊山型の観光客ではなく、まじめで学術的で、しかも長期滞在やリピーター(繰り返し)が当たり前で、環境と文化を守る地域の人々への感謝と尊敬の気持ちをもっているから、地域の人たちからも歓迎される。しかも諫早湾の場合は、どんどん状況が改善されていく過程そのものがテーマなので、訪れた人に勇気と明るい希望を与えるから、人気沸騰することは間違いない。そこで大切なのは、「インタープリーター」と呼ばれる、専門的な知識を持ち、かつ素人にもやさしく紹介・解説するプロの養成であるが、それには漁師と各地の古老の知恵と知識が生きる。そのためにも、一刻も早く諫早湾に潮を入れて、ムツゴロウ復活の日を迎えたい。そして、その日を記念して、2010年頃には九州全域を包含した、回遊型の「九州大博覧会・九州エキスポ」の開催を提唱するものである。 (大阪人間科学大学教授。元長崎総合科学大学教授)

by honmachilabo | 2006-05-06 08:04 | 観光とまちづくり・片寄論文  

千里ニュータウン

最近、千里ニュータウンについて、若手の研究者からヒアリングされることが増えてきた。3月20日には日本建築学会で「日本最初のニュータウン計画」というタイトルで講演したし、4月23日には、吹田市立博物館が主催する「千里ニュータウン展」(4/22-6/4)では、「千里ニュータウンの開発理念と花鳥風月のまちづくり」と題して講演した。質問に応えていると、まるで「古老」になったような気持ちであるが、ここに来てわかたことは、「古老の話は必ずしも正しくない」という発見である。つまり、もう記憶が曖昧なことが結構あるのだ。詳しいことは、拙著『千里ニュータウンの研究』(関学出版会よりオンデマンドで再刊した)をみてほしい。あれは出来るだけ正確に書いたつもりだ。ところで、最後にまとめはこうしめくくった。
S せっかく、あの頃にたくさんの知恵とお金を投じて
E ええ町を、つくったんや!
N なかなか人気は高いけど、さすがに老朽化しきた。
R 立派にリフォームして
I いつまでもいつまでも大切に住み続けることが
N 人間としての
E 英知というもの。
W わたしたち、外部の人間も
T ともに力を合わせて
O 面白く、楽しく、
W ワイワイ語り合って
N 日本を代表するニュータウンとして、ますますええまちに育てていきましょう!

by honmachilabo | 2006-05-03 19:30 | 最新情報